大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1855号 判決

〔証拠〕によれば被控訴人が訴外株式会社三伸(原審で分離前の共同被告。以下「三伸」と略記する)から、昭和三九年七月一六日曩に三伸において訴外日航商事株式会社と売買契約を結んでその引渡を受けていた現神奈川県藤沢市羽鳥字駒形五一三番地の土地上に添付目録一、二の建物(本件建物一、二)を含む六棟の建物を建築することを、代金七五〇万円とし、同日内金二五〇万円を手形で建前予定時の同年八月二〇日に内金二五〇万円を手形で、完成予定時の同年一〇月一〇日に残金二五〇万円を現金で夫々その支払を受けることとして、一括請負い、その後これらの建物の追加工事をも請負った結果、請負代金は合計金八四九万三、四四〇円となったこと、右建築工事は被控訴人がその材料全部を提供してなすものであったことが確定でき、被控訴人が同年一一月初め頃右工事を完成したことは当事者間に争いがない。被控訴人は右三伸との間の請負契約では代金の支払と引換えに建物所有権の移転並びに建物の引渡をする約定であつたと主張するが、特別にそのような約定がなされたと認めるに足る証拠はない。

ところで、被控訴人は、右建築工事完成後も三伸が請負代金を支払わないので、本件建物一、二は工事完成により被控訴人の所有に帰したままの状態であると主張する。注文者の所有又は使用する土地上に請負人がその材料全部を提供して建築した建物の所有権帰属先については見解の岐れるところであるが、本件の場合は前掲〔証拠〕によれば、本件建物一、二は、その他の四棟の建物と同時に、三伸が、土地付き分譲住宅としてその敷地とともに他に売却する目的で、その建築を被控訴人に請負わせたものであり、同年八月頃からパンフレット等によりその購入希望者を募つていたのであつて、被控訴人もこれを了知していたこと、三伸は、本件建物とともに一括して被控訴人にその建築を請負わせたその他の建物四棟について、そのうちの一棟が未だ基礎工事の段階にある際の同年八月二五日に、建築完成後の同建物を目的とし、これを三伸の所有として、訴外今安明との間で売買契約を締結し、また、後記のように被控訴人から建築確認通知書の交付を受けた後の同年一〇月一四日、訴外谷信幸との間で、当時完成に近かつた別の一棟を三伸の所有としてその売買契約を締結し、今安明をして同年一一月一日頃谷信幸をして同年一一月二八日頃右各建物に入居させたほか、今安明の右入居に引続いてその頃三伸の代表者野川賢三の娘婿である訴外山中公平をして別の一棟に入居させたものであるが、被控訴人は、当時前記請負代金の現実の支払が全くなされていなかったにも拘らず、右各建物が自己の所有に属するものとして右各入居に異議を述べるというようなことは何らなさずに、三伸ひいて右各入居者に対し、当該建物を引渡したものであること、被控訴人代表者の岡本辰義は、同年七月頃、本件建物一、二を含む前記六棟の建物について建築基準法に基づく建築確認申請を三伸の代理人として行い、同年九月中から一〇月初めにかけて建築主事からこれが確認通知書を受領し、被控訴人としてこれを保管していたが、同年一〇月一四日以前の同月中旬頃、三伸との間の前記請負契約につき請負代金支払のため三伸が被控訴人に対しなすべきものと約されていた手形の振出交付がすべて終ったのを機会に、本件建物一、二の分を含む建築確認通知書全部を一括して三伸に交付していることが認められ(前掲甲第一四号証中右認定に副わぬ部分は採用しない)、右の事実と建築確認通知書が建物の表示登記申請において申請人がその建物の所有者であることを証する書面として必要な書類であること及び前記乙第一一号証とによつてみれば、被控訴人は、三伸による本件建物一、二を含む前記六棟の建物の建築注文が分譲を目的とするものであって通常ならその分譲代金が請負代金支払資金を賄い得る場合であつたことに加え、請負代金支払確保のため三伸から受取るべき手形も全部受取り、格別、三伸の支払能力に疑いを抱いていなかつたところから、右建物六棟が建物として完成すると同時に三伸にその所有権を帰属させる趣旨のもとに、右建築確認通知書を三伸に交付し、三伸もその趣旨のもとにこれが交付を受けたものであると認めるのが相当であつて(前掲甲第一四号証中この認定に反する部分は採用しない)、右同趣旨を云う控訴人らの主張は理由がある。尤も、〔証拠〕によると、三伸は、本件建物一、二を含む前記六棟の建物につき同年一一月一〇日から同年一二月下旬にかけて第三者名義で表示登記の申請をなすに当り、三伸の役員野川夫美雄を工事人として同人作成名義の工事完了証明書を申請書の添付書類として提出していることが認められるが、右〔証拠〕と弁論の全趣旨によれば、三伸は、右各建物に対する請負代金を支払えないため被控訴人から工事完了証明書を作成して貰えないと考えて右の措置をとつたものと認められるので、前記の認定判断を動かすに足るものとはいえず、また後記二に認定のように被控訴人は本件建物一、二につき三伸に対しその引渡を拒否するに至ったが、それは、同所で認定のように、三伸からの請負代金の支払がないため、その支払確保のため行われたことであるから、これ亦、前記の認定判断を左右するに足らない。

してみれば、本件建物一、二はその昭和三九年一一月初め頃の完成と同時に三伸の所有に帰したものと認むべきであり、これに反する被控訴人の前記主張は採用できず、右主張を前提とする被控訴人の第一次請求はすべて理由がない。

(岸上 田中 平田)

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